2013 年5 月14 日から5 月17 日までの4 日間、カナダはウィスラーで開催されたクローズドのミーティングに参加してきたので報告する。まず初めに、このレポートを書くにあたり、クローズドの会議に参加することを許可していただいたBritish Columbia 大学(カナダ)のPatrick J. Keeling 博士に感謝申し上げたい。このミーティングには日本から私を含めた計画班員3 人が参加した。初日は夕方からポスターセッションがあり、多くの参加者が、ワインやビールを片手に談笑しながらScientific に鋭い指摘をしあっていた。ポスターセッションというエンドレスの議論を可能とする場では、このように互いにリラックスした状態で議論を重ねることがより柔軟な発想を生むように思う。今後日本における会議でも積極的に取り入れていくべきだと感じた。個人的な話であるが、「色々な相談」をした一昨年の夏以降お会いできていなかったDalhousie 大学(カナダ)のJohn M. Archibald 博士にようやく会えた場でもあったため、非常に感慨深いものとなった。 二日目の朝から、トークセッションが始まった。Dalhousie 大学のAndrew J. Roger 博士がChair を務めた最初のセッション「Origin of Multicellularity」から非常に詳細なデータによって裏付けられた魅力的な仮説が次々と発表され、参加者を魅了し、時に厳しい批評にさらされていた。批評も決して的外れなものではなく、より質の高い議論へと発展させるための過程であると感じられた。このようにセッションの間は当然のように議論を重ねるわけであるが、実際は、朝食を参加者らとともにとるところからScientific な議論が始まり、それは昼食をはさんでも、夕食中でもとどまることはなかった。なお、ここで発表内容の詳細を述べることはできないが、Barcelona 大学(スペイン)のInaki Ruiz-Trillo 博士のMetazoa の祖先細胞における多細胞化関連タンパク質の進化、Institute of Parasitology(チェコ)のJulius Lukeš 博士による新規RNA 編集の報告、パリ第11 大学(フランス)のDavid Moreira 博士によるEGT 遺伝子検出における危険性など、ここに紹介できない多くの発表があったことを報告しておきたい。 私の発表は、British Columbia 大学のDavid Smith 博士がChair を務めた「Algal genomics and evolution」のセッションに割り振られており、Monterey Bay Aquarium Research Institute(USA)のAlex Worden 博士やNew Brunswick 大学(カナダ)のAdrian Reyes-Prieto 博士に続く、最終セッションの最終時間という大取りを務めることになっていた。そのため、初日からかなりの緊張を数日間強いられたわけである。Dalhousie 大学のMichael W. Gray 博士やOxford 大学のTom Cavalier-Smith 博士(イギリス)、National Center for Biotechnology Information(USA)のEugene Koonin博士など大物を前に緊張してしまうことは多くの人に共感していただけると思う。緊張した数日間でスライドを準備したこともあり、私の発表自体はかなりお堅い発表になってしまったことをここにお詫びしたい。笑いは一切生まれなかったし、生もうとも思えなかった。その一方でScientific な議論は発表後に長時間行われたことを強調しておきたい。特に、前述のTom とBritish Columbia 大学のJuan Saldarriaga 博士には、(かなり興奮した様子で)私の提唱した仮説に対して強く同調していただくことができ、またPatrick には力強い励ましをいただくことができた。 最後に、筑波大学の稲垣祐司博士、東京大学の松崎素道博士、Dalhousie 大学の谷藤吾朗博士、British Columbia 大学の雪吹直治博士という今後の日本における原生生物、進化生物、ゲノム進化、共生進化研究を牽引していく方々とカナダでの有意義な数日間を共有することができた幸運に感謝申し上げる。(神川龍馬) |
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